【不思議な色の話】プロジェクターで映す黒色はスクリーンの色?どういうこと?

プロジェクターの黒色とは

プロジェクターの黒色表現とは何か?

プロジェクターが映し出す「黒色」は、私たちにとって一種の視覚的なトリックのようなものです。
画面に映し出される黒は、深い闇のようにも見えますが、それが実際に「真の黒色」なのかと問われると、少し違った話になります。
この「黒色」に隠された仕組みを紐解いていくと、面白い事実が見えてきます。
また、黒が「見える」という現象そのものが人間の目と脳の特性に深く結びついている点も興味深い点です。

たとえば、真っ暗な夜空をイメージしてみてください。
そこには何も映っていないのに、私たちは「黒い空」を感じます。
しかし、その黒が実際には何もない「無」を示しているわけではありません。
同様に、プロジェクターの黒色表現も単純に「黒を映し出している」というわけではなく、仕組みとしては全く異なるアプローチを取っています。

この記事では、その仕組みや原理、そして黒色表現が視覚に与える影響について詳しく解説します。

プロジェクターは黒色を作り出す?

プロジェクターの光

プロジェクターは、ご存じの通り光を映し出す装置です。
この特性を考えれば、「黒色を表現する」という言葉には一種の矛盾が含まれていることがわかります。
なぜなら、プロジェクターは光を放出してスクリーンに映像を映すものですが、光は黒を表現できません

では、どのようにして黒色を作り出しているのでしょうか。
気になりますよね!

実は黒色に見えているだけ!?

これは一見すると奇妙に思えるかもしれません。
光が黒を作り出せないのに、プロジェクターから投影される映像には黒色の部分があるではないか!
そのような声が聞こえそうです。

黒色の光ではなく、黒に見えているだけです。

黒色の作り方は、プロジェクターからの光を遮断することで黒を作り出します。
目の錯覚も手伝って、映像は黒に見えるのです。

紙に黒色を印刷する場合、黒いインクを用います。
色の3原色はCMYです。
C(シアン)、M(マゼンダ)、Y(イエロー)です。
これらを混ぜると、黒になります。
まぎれもなく黒色に見えます。

RGBとCMY

左)光の三原色 右)色の三原色

一方、プロジェクターは光の3原色(R:赤・G:緑・B:青、以下RGB)の組み合わせを利用して色を表現します。
RGBをすべて最大出力にすると「白」に見え、逆に出力を完全にオフにすると「黒」に近い状態が作られる仕組みです。

プロジェクターの黒は光を出さないことで表現しています。

と言うことは・・・、もうお分かりでしょう。
プロジェクターで投影されている黒色はスクリーンの色ということになります。

明るい部屋ではスクリーンが見えると思います。
例えば、会社の会議室にあるスクリーンを思い浮かべてください。
スクリーンの色は室内の照明がONの状態では、白に近い色でしょう。
その色が黒になります。
目の錯覚のようですが、それ以上に黒い色は作り出せません。

暗い部屋と黒色の関係:コントラストの向上

プロジェクターの黒色表現が本当に活きるのは、部屋の明るさが暗い環境においてです。
暗い部屋では周囲の環境光が少ないため、スクリーンに映し出される黒色がより際立ちます。
これにより、黒と他の明るい色とのコントラストが強調され、映像全体が締まりのある印象になります。

コントラストとは、明るい部分と暗い部分の輝度の差を指します。
下のような黒~白の階層です。

黒から白のコントラスト

コントラスト比が高いほど、映像に奥行きや立体感が生まれ、黒が深く見えることで映像全体の質感が向上します。
明るい部屋でプロジェクターの映像を見ると、白ちゃけて、ぼんやりした映像を記憶している人も居るでしょう。
それはスクリーンの色以上に黒が出せないため、コントラストが締まらず、薄い映像になります。

完全な黒はできない

スクリーン自体が光を反射する性質を持っており、反射する光が混ざり合うことで完全な黒にはなりません。
スクリーンには反射特性があり光が混ざるのです。
詳しくは「プロジェクタースクリーン生地の4つの反射特性について、種別、特長、用途を分かりやすく解説」をご覧ください。
また、プロジェクターも黒と言えども完全にシャットアウトは出来ないので、完全な黒にはなりません。

スクリーンの色と言うことは周囲の明暗の影響を受けます。
暗いお部屋ならより黒い黒に、明るいお部屋なら、明るめの黒(グレーなど)になる訳です。

プロジェクターの種類による黒色表現の違い

プロジェクターの主な投影方式として液晶方式(LCD)とDLP方式があります。
一般的に液晶方式は黒色を作るのが苦手で、明るい部分と暗い部分が混在した映像ではとくにそのような傾向と言われています。
一方、DLPはでは光漏れが少なく、黒の表現を得意とします。
プロジェクターの投影方式については「透過型液晶方式プロジェクター(LCD)の投影の仕組みと特長をイラスト付きで解説」、「初心者でも分かる!DLPプロジェクターの「DLP投影方式」について分かりやすく解説」をご覧ください。


まとめ

プロジェクターの黒色表現は、私たちの視覚と脳に巧妙に働きかけて作られた黒色です。
光を「出さない」ことで作り出される黒は、完全な暗闇ではなく、周囲の光環境との相互作用によってその見え方が決まります。
プロジェクターの種類や技術の進化によって、より深みのある黒色が追求され続けています。
黒色の表現方法を知ることで、プロジェクターの映像に対する見え方も変わるのではないでしょうか。
プロジェクターで映像を見る際、今回のお話を思い出してみてください。

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