プロジェクタースクリーン生地の4つの反射特性について、種別、特長、用途を分かりやすく解説

スクリーン生地の反射特性とは

プロジェクタースクリーンはその種類を考える時に、光学的特性・機構などから、その多様さに驚くことでしょう。
多様さがある分、分かりにくい、選びにくいといったことがあるかもしれません。
その特性を知ることで、目的にあったスクリーンを選ぶことができます。
反射特性の違いにより、映像の見え方が大きく異なります。

例えば拡散型はスタンダードなタイプで、視野角が広く、大勢の人が集まって見ることに適しているなど、それぞれの生地特性により、用途があります。
このように、生地の反射特性を知ることで、自分がスクリーンを使用する目的にマッチさせて、きれいな映像を見ることが出来ます。

スクリーン生地のタイプはスクリーンの後ろにプロジェクターを置いて投写させるリアタイプ(透過型)と、スクリーン前面から投写するフロントタイプ(フロント投写型)に大きく分けられます。
今回はホームシアターや会議室などのビジネスシーンでも多く利用される、フロントタイプスクリーンの生地特性についてご説明いたします。

今回は専門的な用語も出ててくるスクリーンの反射特性について、分かりやすく解説します。

4つの反射特性の特長と主な用途について

スクリーンの反射面の生地は大きく分けて広階調型、拡散型、回帰型、反射型の4種に分類されます。
スクリーンを視聴する環境や用途に応じて、それぞれの反射特性を上手く利用することが重要となります。
それでは、それぞれの反射特性についてご説明しましょう。

(1)拡散型スクリーン

プロジェクターからの光が全方向に拡散反射するタイプです。

拡散型

イラストから分かる通り、プロジェクタ―からの光が全方向に拡散しているのがわかります。
入ってきた光を拡散するため、拡散型と言われ、それぞれの方向に光が戻るため、視野角が広いスクリーンとなります。
どの位置から映像を見てもクオリティが下がりにくいことが大きな特長です。
それは部屋のどの位置からも同程度の映像を楽しめる事を意味します。
たくさんの人が集まって見るような場合には拡散型の生地を使います。

スクリーン生地ではスタンダードなタイプで、多くの製品に取り入れられています。
会議室やミーティングルーム、ホールや講堂など、ビジネス用途ではほとんどが拡散型の生地が使用されます。
勿論、ホームシアターなどホームユースでも多くの製品で取り入れられています。
様々な用途で使用できる万能選手と言ったところでしょうか、最も使用されているスクリーンです。
階調表現がナチュラルなので、映像表現が主体のコンテンツなどに特にお勧めします。

スクリーン面に入る光は一様に拡散反射するため、有害光(照明の光など映像以外の光)も同様に拡散するため、照明対策やプロジェクターの明るさが必要となります。

万能選手と書いた通り、このタイプの生地を選んでおけば、多くのシーンで無難でしょう。

(2)回帰型スクリーン

スクリーン表面に極々小さな光学レンズガラス球を散りばめたスクリーンです。
入射光と同じ方向に反射光を戻す特性のため、回帰型と言われます。

回帰型

イラストでプロジェクターからの光を強く戻しているのが分かると思います。
照明などの有害光も入ってきた方向(照明の方向)に戻します。
そのため有害光の影響が少ないのが特長です。
ゲインとはスクリーン生地の反射率を数値で表したもので、詳しくは「スクリーンゲインって何?ピークゲイン?ハーフゲイン?スクリーンの反射特性を数値で表すスクリーンゲインを徹底解説」をご覧ください。

夜間、車を運転中にヘッドライトの光が道路標識にあたると、見やすいと思いますが、それと同じ反射です。
道路標識に当たった光が戻る、光を戻す性質(回帰型)で作ったスクリーンです。
光が収束されるため、スクリーンゲインはおおよそ1.5~3程度となり明るいスクリーンになります。

ガラス球が入っているため、ピークゲインは高く、明るいスクリーンになります。
ピークゲインが高くなる一方で、視野角は狭くなり、プロジェクターに近い位置で見ることが綺麗で明るい映像を見るポイントとなります。
ホームシアター用途でも良く使用される生地になります。

(3)反射型スクリーン

スクリーン表面に均一の特殊パール顔料をグラビア印刷し、高輝度を維持しながら視野角を確保したスクリーンです。

反射型

イラストを見てみると、プロジェクターからの光を入ってきた方向と逆の方向に反射させているのが分かると思います。
そのため、ピークゲインは高くなります。

プロジェクターからの光を対照的に反射させるため、反射型と言われ、視聴位置に対し対象となる位置でプロジェクターを置く必要があります。
平面性の維持の難しさや、プロジェクターの性能の向上により、近年はほとんど選ばれるシーンが少なくなってきました。

(4)広階調型スクリーン

HDR対応プロジェクター専用のスクリーンです。

広階調型

上のイラストの通り、プロジェクターからの光を大きく戻し、光が拡散しているのが分かると思います。
よってピークゲインが高く、明るいスクリーンです。
拡散することで、視野角もあります。
回帰型と同じく、光を戻す特性から、有害光も戻します。
拡散型・回帰型・反射型のそれぞれの特性を兼ね備えた第4のスクリーンです。
ピークゲインは高い一方で、ビューアングルが60°の位置でも拡散型程度のゲインを確保しています。

昨今、4K解像度でHDRのコンテンツも多く、その精細な映像を存分に引き出すスクリーン生地タイプです。
高いゲインを確保しながら、ホットスポットを抑えた幕面です。

ピークゲインが高くなると、どうしてもホットスポットが出やすくなりますが、広階調型のスクリーンは表面素材に特殊加工を施し、視野角も確保しています。
高ゲインで光を活かし、黒の階調もしっかり表現し、階調の広さが特長のひとつです。

用途はホームシアター専用室など、ハイクオリティな映像を求めるハイエンドな生地で、ホームシアターファンから絶大な支持を得ています。

まとめ

4つのタイプに分けてスクリーンの反射特性について説明しました。
同じように見える白い生地のスクリーンですが、顕微鏡でスクリーン生地を拡大してみると、反射特性のタイプにより生地の作りの違いが良く分かります。
プロジェクターからの光を戻す特性は大きく異なります。
スクリーンが利用される映写環境・条件、目的によって反射特性のタイプを選択しましょう。